がん患者の不妊対策…治療前 卵巣取り出し凍結 2013年9月5日 読売新聞

若年がん患者の不妊対策が注目されている。がん治療、生殖医療の双方が進歩したことで、がん克服後に妊娠・出産が望める可能性も出てきた。その一つが、抗がん剤治療を受ける前に卵子や精子などを凍結しておく方法だ。昨年11月には、こうした治療の普及を図ろうと、産婦人科医を中心とする「日本がん・生殖医療研究会」が発足した。

 

抗がん剤の種類や投与量、治療開始の年齢などによっては、無月経や無精子症になるなどして、がんが治っても妊娠・出産が難しくなる場合がある。

がん治療への不安だけでなく、妊娠・出産が望めないとなれば、さらに将来の不安は大きい。だが、かつては何よりもがんの治療が優先で、妊娠・出産の可能性を残すがん治療は今ほど重視されてこなかった。

「がん治療が最優先であることは当然だが、妊娠・出産の可能性があるなら最大限残したいと考えています」。聖マリアンナ医大病院(川崎市)教授で、同研究会代表の鈴木なおさんは話す。

同病院では、患者の年齢や抗がん剤の種類、投与量などを勘案しながら、抗がん剤や放射線治療で卵巣や精巣が影響を受ける前に、卵子や精子を凍結する治療を行っている。患者が既婚の場合は、取り出した卵子を体外受精させ、受精卵として凍結する方法を勧めるという。その方が、妊娠・出産の可能性が高いからだ。

2010年からは卵巣組織の凍結を始めた。卵巣組織には様々な成長段階にある卵子が存在するが、卵巣組織ごと凍結すると、より多くの卵子を残すことにつながるという。卵巣にがんが転移していないことが条件で、全ての患者には適用が難しいが、同病院ではこれまでに約30例を実施した。

同病院では、まず片方の卵巣を取り出して厚さ1ミリ、1センチ四方に切り取り凍結している。

鈴木さんによると、凍結は、国内初の「ガラス化法」と呼ばれる方法で実施。細胞内の水分の凍結が課題だったが、凍結する細胞内の水分を特別な溶液に置き換え、氷の結晶を作らずに瞬時に凍らせる。患者ががん治療を終えた後、卵巣片を融解して患者の卵管などに移植し、自然妊娠か、難しい場合は体外受精する。

現在、国内で卵巣組織の凍結が可能な施設は6~7施設あるという。

昨年11月には、鈴木さんはじめ全国の産婦人科医ら20人以上が発起人となり、「日本がん・生殖医療研究会」(今年3月にNPO法人化)を設立した。妊娠・出産の可能性を考慮したがん治療はまだ一般的ではなく、こうした医療の普及を図っていく必要があると考えた。

同研究会はホームページ(http://j-sfp.org/)で、妊娠・出産の可能性を残すための治療法や、治療の相談が可能な全国の施設を紹介。がん治療、不妊治療を行う医療機関の連携を進めたり、医療機関と患者を結びつけたりすることで、患者にとって最適な治療ができるようにするのが狙いだ。

鈴木さんは「患者さんだけではなく医療関係者が活用し、幅広い選択肢のある治療に役立ててほしい」と話す。(酒井麻里子)


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